札幌高等裁判所 昭和33年(ラ)4号 決定 1958年10月27日
抗告人 浅野久雄
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。
抗告人は、債権者札幌信用金庫との間に、本件債務名義に掲げる債務の履行を猶予し、且つ強制執行をしない旨の合意があると主張するが、かかる実体上の事由を以つて強制競売開始決定に対する異議の事由となすことは許されないものであるから、右主張はこれを採用するわけにいかない。
次に、抗告人は、本件執行の目的物である建物のうち、札幌市南一〇条西八丁目五三七番地家屋番号六九番、木造亜鉛鍍金鋼板葺二階建居宅、建坪一八坪とあるのは現実には札幌市南一〇条西八丁目五三七番の五に所在する建坪二三坪外二階二二坪五合の建物であるから、債権者が右現実の地番及び坪数と登記薄上の記載とを一致せしめるための更正登記をしないで、本件強制競売の申立をしたのは違法である旨主張するが、競売申立における不動産の表示は、競売すべき物件との間の同一性を認識することができる程度であれば足りるのであつて、本件建物につき、競売申立書に表示する所在地番及び坪数と現実のそれとの間に、抗告人の主張する右程度の相違があつたとしても、その間の同一性を認識する妨げとはならないから、本件競売の申立がこの点において不適法であると言うのは当らない。それゆえ、抗告人の右主張も、またこれを採用することができない。
よつて、民事訴訟法第四一四条、第三八四条、第九五条、第八九条を適用して主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 臼居直道 裁判官 安久津武人 田中良二)